みんなで創る度会県!度会県民参加型プロジェクト
鳥羽市鳥羽なかまち アートの裏路地ツアー 隠絵(かくしえ)~見つけてみよう、自分の表現~
【前編】鳥羽なかまち アートの裏路地ツアー 隠絵(かくしえ)~見つけてみよう、自分の表現~
※県民参加型プロジェクトで開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため延期となりました。次回開催時はHP上で改めてご連絡します。今回は先に地域の取組の紹介を致します。
鳥羽の台所と呼ばれていた町
地域を活性化する取組としてアートをきっかけとしたまちづくりは全国的にもよく見られる。なぜアートなのかとふと疑問に思うが、地域の何気ない景色や暮らしがアーティストの心に響き、インスピレーションを得ることもあるそうだ。
また、設備面でも、地方では空き家が問題となっており、受け入れ体制を整えている地域ではアトリエ兼住居が格安で借りられるなど、条件面が整いつつある。これは創作する場を要するアーティストにとっても嬉しい状況だ。またアーティスト・イン・レジデンス(AIR)として、一定期間アーティストがその地に暮らし、作品を制作するという動きも地方では起きている。
そんななか、いち早く地域で美術大学の学生を受け入れて、まちづくりを行うなど、着実に歩みを進めてきた鳥羽なかまちをご紹介したい。
鳥羽なかまちのある鳥羽市は水軍の将 九鬼嘉隆が海のすぐそばに鳥羽城を築いた歴史を持つ。
現在、城跡には市役所や旧鳥羽小学校の校舎があり、城の北側には鳥羽駅を中心に旅館や飲食店が軒を連ね、かつては武家屋敷が並んでいた一角もあったと聞く。東側には鳥羽水族館やミキモト真珠島がある。
▲写真中央が鳥羽なかまち
今回ご紹介する鳥羽なかまちは、観光施設や国道の裏路地的なエリアにあり鳥羽城跡の南側に位置する。鳥羽なかまちは城があったころから住民の生活を支える「鳥羽の台所」として栄えた。当時は陸路より海路が使われていて、離島や峠を隔てた漁村から鳥羽なかまちエリアに船で買い物に来ていた。50年程前までは魚屋、八百屋、花屋、お菓子屋など生活に必要な個人商店が軒を連ねていたが、今ではほとんどの店が廃業をして多くの人が行き交う当時の賑わいは失われている。
アート向きの町
訪れたのは、鳥羽なかまちにあるギャザリングルーム クボクリ。
元クリーニング店をリノベーションして作られていて、1階の手前はコワーキングスペース。
▲取材中、偶然カフェスペースにやってきたのは家族で鳥羽なかまちに移住してきた女性(左)とコワーキングスペースとして活用する鳥羽のライター(右)。
日替わりでカフェなどが入るレンタルスペースやコワーキングスペースとしても活用されている。
1階の奥はキッチンスペースがあり、大阪の割烹料理店「花清水」を鳥羽に移転。移住した割烹料理人が腕を振るい、オリジナルチャンポン麺や鯖棒寿しなどを提供している。
そして2階はシェアオフィス。
最近よく耳にする「地域の場づくり」の模範的ともいえるクボクリには、地域内外からお年寄りも若者も多世代の人が訪れている。
▲写真奥:濱口 和美さん 写真手前:佐藤 創さん
お話いただいたのはクボクリを営む合同会社NAKAMACHI代表の濱口 和美さんと、鳥羽市地域おこし協力隊(以下、協力隊)の佐藤 創さん。
店内は落ち着きのある古民家カフェという雰囲気。所々に施されているロゴなどのデザインもスタイリッシュさを感じますねと告げると・・、
濱口さん:よくぞそこに気がついてくれました!鳥羽なかまち会の副代表、美和ちゃんがデザインしたんですよ。
美和ちゃんこと遠藤 美和さんは、鳥羽なかまちでアトリエ&カフェを営みながらグラフィックデザインの仕事もしている。鳥羽なかまち会(代表:坂田 さや香さん)は約20事業者からなる住民主体のまちづくり活動団体。
発足は鳥羽なかまちにある「大庄屋かどや」という元薬屋だった国登録有形文化財の屋敷を修復し、まちの拠点として運営するかどや保存会が立ち上がったことがきっかけだった。現在かどやは展示やイベントスペースとしても一般に公開されている。
鳥羽なかまち会は、空き家を活用してかどややクボクリをリノベーションしたり、定期的にマーケットも行うなど活動的だ。その一人である濱口さんのご実家は豆腐屋を営む。
▲佐藤さんと濱口さんのお母さん
濱口さん:今は母が一人で豆腐を作ってます。86歳と高齢なので週に2日ほどの営業です。母は好奇心のある人で「豆乳ソフトクリームを販売したい」と十数年前に言い出して。なので私はカフェができる営業許可を取りました。
聞けば豆腐屋の営業日には多くの常連が通い、店主や住民同士との会話が生まれているという。昔どこの地域でもあった豆腐屋を通じて町の人が繋がる風景が残っている。そんな濱口さんは、なぜ鳥羽なかまちの活性化を行うようになったのだろうか。
濱口さん:実家を離れて東京、名古屋で仕事をしながら暮らしていました。定年退職を機に鳥羽なかまちに帰ってきたんです。私が小さい頃は栄えていた鳥羽なかまち。あんなに賑やかだったのに、変わってしまった町で暮らしてみて「これは違うぞ」と、危機感や焦燥感を覚えました。「私たちの世代が何かすべきだったのではないか」と思うようになりました。
外資系大手情報処理会社の人事次長を勤め上げた濱口さんは40代の時、多忙を極めて実家に帰る時間も取れなかったという。その時に地元の人が両親を助けてくれていた。
濱口さん:困ったときに救いの手を差し伸べてくれた。だから、鳥羽なかまちにお返しをしたいです。自分ができる範囲のことを町のためにする。そういう人が増えると町は変わってくると感じています。
自分ができる範囲と話す濱口さんは、鳥羽なかまちに女子美術大学(東京都)の学生たちが学んだ知識を地域で実践する一環でアーティスト・イン・レジデンス的な活動をしたとき、鳥羽なかまちの仲間たちと一緒に合宿の場やお風呂の提供などを地元の人にお願いするなどバックアップを行ってきた。
かつて地元の人に手を差し伸べられた濱口さんは、今行っている活動をまさに「手探り」だと表現する。地域の場づくりや地元の人との連携も形成されつつあるなか、濱口さんは鳥羽なかまち活性化の次の手を教えてくれた。
濱口さん:鳥羽なかまち会の活動を通じた移住者は10名以上います。鳥羽は交通の便もいいし、旅館なども多いのでサービス業のお仕事も紹介できます。あと、鳥羽なかまちは私にとっては見慣れた風景なのですが、若い人を案内するとレトロな雰囲気を喜んでくれるので、アーティストなど美的感覚を持った人に好まれる町なのではないかと思うんです。
東京都出身、協力隊の佐藤さんもそのひとりだ。佐藤さんはアニメーション動画の制作も手がけるアーティストの一面もあり協力隊の任期が終わっても、鳥羽なかまちで暮らす予定だという。
佐藤さん:鳥羽なかまちは町の人が繋がっているのがいいです。あと、アートギャラリーに使えるスペースやアトリエにできる空き家も多い。今回のイベントで、実際にそういった場所を参加者と巡ります。
今回のイベント「鳥羽なかまち アートの裏路地ツアー 隠絵(かくしえ)」では、対象となる空き家を巡るだけでなく、建築家を志す大学生も10名以上参加の予定で、実際にどのようにリノベーションできるかを彼らと一緒に考えることもできる。
クボクリを後にして、佐藤さんに鳥羽なかまちをご案内いただいた。
体温を感じる町。
▲右はクボクリの裏口。左となりは移住体験住宅(管理:鳥羽市)。
▲蔵が多い鳥羽なかまち。ギャラリースペースに使える明治蔵。
▲蔵の中はアンティークで趣のある雰囲気だ。
▲ギュっと寄り添い合うように建っている木造家屋。
▲今回のイベントのチラシに使われた古民家。
▲鳥羽なかまちには暮らす人が手入れする観賞用植物が多い(どこか懐かしい雰囲気)。
▲ユニークな看板の酒店。
▲店内には昭和レトロなコーナーも。
▲ご主人が見せてくれた、レトロなマンガ。
鳥羽なかまちではこのような屋号旗が、商店または商店だった建物に飾られている。
▲西念寺の門前。雰囲気あります。
▲西念寺。ギャラリースペースにもなります。
▲魚の燻製などを手がける魚寅。
▲魚醤も作っています。
▲ふるさと納税の返礼品でも人気。
▲魚寅代表の杉田さんは生まれも育ちも鳥羽なかまち。
▲魚寅の2階7部屋と1階4部屋も、今回の活用スペース対象。
▲和モダンな窓。
▲電気カバーも和モダン。
▲最寄り駅(近鉄中之郷駅)まで徒歩ですぐ。
▲歩いてすぐのところに海。定期船乗り場もあります。
▲これから学研に行くと話す小学生。
昭和レトロな鳥羽なかまちを歩いていると小学生に声をかける地元の人や、親しく接してくれる店主、古い街並みが醸し出す懐かしい雰囲気は、まるで町全体に体温があるような、そんな温かさを感じた。
そして思う。かつて多くの個人商店で賑わいがあった町はその役目を終え、時代に合った形で再始動していく。到来した人口減少社会にそう多くのお店は要らないし、モノよりコト・ココロが重視される価値観の時代がやってきている。そう考えると「昭和レトロな町で好きな生き方を手に入れる」という暮らしの価値観は時代遅れではなく、この先の時代に合った生き方なのかも知れない。地方にはまだそういった可能性が残っている。
まだ想像したことがないあなたらしい暮らし方を、鳥羽なかまちで探してみませんか。移住するしないは別にして、忘れていた大切な何かが見つかるかも知れません。
※本県民参加型プロジェクトは、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため延期となりました。次回開催時はHP上で改めてご連絡します。
詳しくは合同会社NAKAMACHI
HP https://tobanakamachi.com Mail tobanakamachi@gmail.comまでお問合せください。