みんなで創る度会県!度会県民参加型プロジェクト

熊野市・南伊勢町度会県おんらいん♨さろん

みらいの漁村フィールドワーク(前編)

2人の現役漁師をゲストに迎えて漁村の話をお聞きした今回のオンラインサロン。
話が進むにつれて話題は「女性の活躍」や「資源の保全」など、漁村を越えて普遍的なテーマに広がっていきました。
次回のワークショップ後編に向けて盛り上がった第6回の内容をダイジェストで紹介します。

コロナ禍でも度会県とつながれる新しい関係づくりのためスタートした「度会県 × OTONAMIE おんらいん♨さろん」。
県内でウェブマガジンを運営している「OTONAMIE(オトナミエ)」とともに度会県エリアで活躍するキーパーソンを毎回ゲストに迎えて開催しています。

2月4日の第6回は、前回に続きダブルゲストでの開催!
度会県では入り組んだリアス海岸に小さな漁村が多く点在し、漁業者の減少などが課題となっています。
そこで「みらいの漁村」をテーマに、性別も活動地域も異なる2人の漁師をお招きしました。

実は、今回のサロンは前編になります。
第7回の後編(2月24日開催予定)ではワークショップを行うので、そのヒントになりそうな漁村の「いま」と「これから」についてたっぷりと語っていただきました。

~目次~
1.ゲストとファシリテーターのトークライブ
2.参加者とゲストのトークセッション
3.次回予告

1.ゲストとファシリテーターのトークライブ

(村山さん)
本日のファシリテーターを努めるOTONAMIE代表の村山です。
このサロンには三重県外からもたくさん参加していただいており、「三重県ってどこですか」という質問をいただいたこともあるので、まずは三重県の位置と、ゲストのお二人が住む場所を地図でお示ししたいと思います。
こちらの赤色のところが三重県です。

三重県の真ん中から南は海岸線がギザギザになっています。
いわゆる「リアス海岸」ですね。
そして、ゲストの橋本純さんが住む南伊勢町と、もう一人のゲストの田中りみさんが住む熊野市がそれぞれこちらです。

  • 南伊勢町はこちら。伊勢神宮のある伊勢市の南に位置しています。

  • 熊野市はこちら。三重県の南端に位置し、和歌山県、奈良県と隣接しています。

(村山さん)
それでは、まず一人目のゲストの橋本純さんにお話を伺います。
橋本さんは南伊勢町の阿曽浦(あそうら)という漁村で真鯛の養殖などを手がける「 友栄水産 」の3代目で、10年ほど前からは漁師体験の受入や ゲストハウス の運営もされています。
その前は海外で暮らしていたそうですが、なぜ戻ってこようと思ったんですか?

(橋本さん)
30数か国をまわっていたんですけど、最後はハワイにいました。
たまたま帰省した時に、バブル後の不景気で養殖業が立ちいきにくくなっていたのを見て、「もしかしたら僕の帰る場所が無くなってしまうかも」と感じたんです。
旅ができるのも帰る場所があるからなので、ちゃんと帰れる場所を残そうと思い、戻ってきました。

  • 橋本純さん

(村山さん)
漁師体験も取材したことがありますが、コロナの前ってすごく人が来ていましたよね。
口コミで外国からもたくさん来るようになって、タヒチから来たフランス国籍の方が漁師のインターンシップ生になっていたとか。
もちろん日本人のインターンもたくさん受け入れていらっしゃいますが、昔から受入をしていたんですか。

(橋本さん)
僕の親の時代からやっていました。
そのころはインターンシップなんて言葉はないので「研修生」って呼ばれ方でいろんな大学から来ていて、僕が小学生だったころは、夏休みになると大学生が2、3人家にいるという環境でした。
今またインターンシップという名前になって人が動き出していますが、40年前からあったことなんですね。
若者が飢えているというか、外に出たがっているというか、そういうのは僕から見るといい傾向だと思います。
企業インターンの場合は就職を強調しているところもありますが、僕のところには就職のためではなくて漁業を知るためとか、地方を知るために来てくれているので、面白い現象ですし、これから先が楽しみです。

  • OTONAMIE代表の村山さん

(村山さん)
大学生の皆さんの反応はどうですか。この子こう変わっていったなという感触はありますか。

(橋本さん)
揺れている船の上でバランスが取れるようになったり、体の構造から変わります。
自分の体の中から見たことの無い力が出てくる。
それだけで、一日二日で本当に人は変わってきますね。

本日のもう一人のゲスト、田中りみさん。
東京で飲食店を展開しつつ漁業に参入している 株式会社ゲイト の社員として、熊野市の二木島(にぎしま)町で漁師をしています。
田中さんと仲のいいOTONAMIE副代表の福田さんにファシリテーターを交代して、お話を伺いました。

(福田さん)
二木島では田中さんを含め女性だけの漁師チームができているんですよね。
魚を獲って、加工して、東京まで運ぶという一連の流れをこのチームで行っているということです。
さらに漁師体験の受入も行っているそうですが、参加者からはどんな反応が返ってきますか。

(田中さん)
コロナの前ですが、保育園児から大学生まで来てくれていました。
みんな獲った魚を食べて「おいしい」と言うかと思いきや、まず「臭くない」って言うんですよ。それが衝撃でした。
魚が苦手ですっていう子も来るんですが、自分で獲って自分でさばいて食べてみるとおいしく感じるんですかね。それから「魚が好きになりました」っていう子もいます。

  • 田中りみさん

(福田さん)
漁師になりたいっていう声も出てきますか。

(田中さん)
ありますね。
魚をさばく体験もあるので「料理人になりたい」っていう子もいるし。

(福田さん)
田中さんも漁師になりたいという夢があって、でも漁師になれなかったっていう経験があるんですよね。
それから漁師になるまでの経緯を教えてもらえますか。

(田中さん)
祖父、父、叔父たちもみんな漁師だったので自分もなりたかったんですが、女の子を船に乗せないという習慣がすごく強くて諦めていました。
それでずっと違う仕事をして、東京で働いていたこともあったんですが、ゲイトの社長さんに出会って、「きみも漁業やりたいならやりなよ」って背中を押してくれました。
それからいろんな地域の意見を聞いて、ここなら女性でもできるという場所で漁師をやっています。

  • OTONAMIE副代表の福田さん

(福田さん)
漁師さんたちの伝統を学びながらも、女性だからこそできるようなスタイルに変えていることも多いと思います。具体的にどういう工夫をしているか教えてください。

(田中さん)
漁師体験をやっていると都会から男性は来るんですが、女性は少ないので、漁師のほかにも水産加工など女性が働ける職場を作ろうとしています。
漁師の仕事も、女性でもできるように普通のものより超小型にした定置網を始めています。

(福田さん)
反応はどうですか。問い合わせは多いですか。

(田中さん)
女性だけで漁師を始めてから去年で1年くらい経ち、全国から問い合わせも来るようになったんですが、コロナの関係でまだ受入はできていません。
あと、酔い止めや漁師用の雨合羽のスポンサーの話も来ていますね。

(福田さん)
そういう風に、男性のイメージだった漁業に女性も関わっているというのが伝わっていくといいですね。
橋本さんは漁業に女性が関わることについてどう思われますか。

(橋本さん)
すごく良いことです。
例えば真珠の養殖とか海女さんみたいに、水産業でも女性じゃないとできない仕事ってたくさんあるんですよ。
それに、船に乗って獲ってくるのは男だけど、陸に上がった魚の処理をするのは全部女性ですし。
だからそういう意味では昔から女性比率はすごく高い仕事なんですが、男性は残っても女性はみんな出ていくので人は減っていっちゃう。
なので、女性のできる仕事を増やしたり、女性でもできる漁業を新たに創り出したりするのは希望の光なんです。
それと、女性の方が細かいことに気が付いて、男性の漁師だったら捨てていたような魚も「それ食べれるから商品にしようよ」って言ってくれたりする。
今の日本だけじゃなくて世界が抱えている問題も解決しそうなアイデアがいっぱい出てくるだろうから、とても楽しみです。

(福田さん)
田中さんのところでは、市場に出せない小さな魚を加工して「 猫ごはん 」として売り始めましたよね。評判はどうですか。

(田中さん)
けっこう注文をいただいています。
漁師さんって市場で値段がつかない魚を全部捨てちゃうんですけど、私たちはそれも全部持って帰ってくるので、次から次へと新商品ができています。

2.参加者とゲストのトークセッション

Zoomのチャット機能を使って参加者の方から質問をいただきました。
ファシリテーターの福田さんが紹介してくれました。

(福田さん)
漁業権があるから漁業には参入しにくいと聞いたことがあるのですが本当でしょうか。

(橋本さん)
これはそのとおりです。
ただ、漁業人口がすごく減っており、去年には法律も改正されたので、これから受け入れていくことになると思います。
そうは言っても漁師になるにはお金もすごく必要だし、急に始めるのは難しいので、初めは僕のところみたいな企業に見習いとかアルバイトとして入ってもらって、一緒にコミュニティを作り上げていくというやり方でないと参入しにくいのは事実ですね。

(福田さん)
そういえば以前、市場で魚を買う権利も外からだと獲得できなかったのが最近変わってきたと、橋本さんから聞いたことがあります。

(橋本さん)
実際に飲食店が権利を買って、直接買い付けに来るところも増えてきています。
仲買(なかがい)と呼ばれる人たちの数が減ると漁師は成り立たないです。
目利きの人たちにいい値段で買ってもらうのが漁師にとっては良いことなのですが、その数が減っているのでこれからは新しい買い手も増えていくのかな。
ましてオンライン化が進んでいくと、もしかしたら県外からオンラインで入札できるという新しいスタイルも確立してくるかもしれません。
そうなるとネットを扱える若者なら、漁をしながらタブレットでピコピコするという漁師になれます。
海で魚を獲る以外のことも漁師の仕事になってくるでしょうね。

  • 南伊勢町・阿曽浦の風景(OTONAMIEウェブサイトより)

(福田さん)
最近、一般の消費者が野菜を農家から直接買う定期便などの動きが増えている気がするんですが、漁業でも似たようなことはありますか。

(橋本さん)
このコロナ禍で去年から色んなスピードが加速していて、消費者のもとに直接届けやすくなりました。
定期便とかサブスク的なものは増えていくと思います。
さっき田中さんが紹介していた「猫ごはん」も、ペット版のサブスクみたいなものですね。できれば飼い主の食べる分も買ってくれと。

(田中さん)
そうですね(笑)

(福田さん)
消費者と漁師が顔の見える関係でつながることで、漁師さんにはどんなメリットがあるんですか。

(橋本さん)
消費者の声が聞こえることで要らないものを獲らずに済みます。
僕たちの仕事って自然に負荷をかけているんですよ。
食べるものだから仕方のないことなんですが、その負荷をどれだけ減らすのかが課題です。
これまで儲けられないから数で勝負する時代が続いていたんですが、消費者が理解して買ってくれることで利幅を上げられるなら、僕らは獲る量を半分に減らすこともできる。
水産業界は今後そういう方向に向かって動く必要があるだろうし、それを消費者に理解してもらうためには僕らが情報発信をしないといけない。
僕も田中さんもテレビに出ましたけど、これまで漁師がこんなにメディアに出ることってなかったと思います。
こういうときにちょっとずつでも知ってもらうことをしていかないといけない。

(福田さん)
消費者への直接販売は物流費が課題だと思いますが、何か対策は考えていますか。

(橋本さん)
僕が使っている「 ポケットマルシェ 」というECサイトでは、普通に宅配便で送るのに比べると30パーセントくらい安くなります。
個人でできないことは、そういうサービスに乗っかるのも一つの手ですね。
それに、消費者への水産物の直販っていう新しいビジネスに向けて、物流も含めて全てのところが動き始めています。
何が起こるか分からない時代だから、きっと変わってくると思います。

  • 熊野市・二木島の風景(株式会社ゲイト 二木島ラボのFacebookページより)

(福田さん)
コロナ禍をきっかけに常識にとらわれなくなったことで、フットワークの軽いお二人のところにいろいろなコラボの持ち掛けがあったと思うのですが、「これは面白かったな」というものがあれば教えてください。

(橋本さん)
携帯ショップで新規契約すると僕のところの鯛が届くというキャンペーンをやってもらいました。これは地産地消を進めるいいキャンペーンだったと思います。
あとは銀行員の方を対象にオンラインで鯛のさばき方教室もやりましたね。「地元の産業を知ろう」という研修だったんですが、60人くらいの銀行員が鯛をさばけるようになりました。

(田中さん)
いろいろオファーはありましたが、個人的に嬉しかったのは、ある有名なホテルのレストランにうちの魚を使ってもらえるようになったことですね。
一流のシェフがこういう風に魚をさばきましたという報告をしてもらって、逆に勉強になりました。

(福田さん)
今まで生産者を意識したことがないという方が多かったと思うんですが、コロナをきっかけに生産者の方からの直接販売が浸透してきたから、漁師さんや農家さんの顔が見られるようになったことで食卓が豊かになった気がします。

(橋本さん)
これまで料理人さんや、そのバックヤードとして築地は注目されていましたけど、そのさらにバックヤードは僕たちなんです。
だから築地を見に行くような人たちは、いまはコロナで自由がきかないですが、この先「もっと面白いところがあるぞ」と言って僕や田中さんのところに来るはずです。

3.次回予告

漁村と漁業のこれからについて、現場からの熱い想いをお聞きすることができました。
橋本さん、田中さん、どうもありがとうございます。

さて、次回のワークショップ「後編」では、引き続き橋本さんにゲスト出演していただき、一緒に漁村を盛り上げる具体的な方法を考えたいと思います。

(村山さん)
志摩半島では昔から真珠養殖が盛んで、海に沿って真珠の加工小屋がぽつぽつと立っています。
派手な色のペンキで塗られているんですが、橋本さんによると遠洋漁業をしていた昔の漁師さんが海外のカラフルな漁村を見て、それを真似して塗ったそうです。
OTONAMIEで取材もしたんですが( 記事 )すごく趣があるしストーリーもあるし、いいなぁと思っています。

  • OTONAMIEの紹介記事より

以前の オンラインサロン第3回 では、鳥羽なかまちの空き家を活用したらどうなるかという妄想のワークショップをしました。
あのときも盛り上がって、今では空き家をリノベーションするためのクラウドファンディングが始まっています。(詳しくは コチラ から)
それと同じように、これらの加工小屋から今は空き家になったところを取り上げて、ここを違う使い方にしてみたら漁村がどう盛り上がるかというワークショップを、次回のオンラインサロンでやってみたいと思います。

また、このサロン終了後、もう一人ゲストとして西岡奈保子さんに来ていただくことが決まりました。

西岡さんは南伊勢町の移住交流コーディネーターであり、今年1月には地域の人とつながる「焼き芋の移動販売」も始めました。
次回のワークショップでは、西岡さんたちが取り組む「家機能の町化」=リビングはカフェ&バー、キッチンは食堂、書斎は本屋など、家の機能をまちの中に配置していくコンセプト を紹介してもらいつつ、海沿いにある空き家の活用について皆さんと考えたいと思います。
参考:「うみべのいえ」ウェブサイト

今回の記事を読んで漁村に興味が湧いてきた方、ぜひお気軽にご参加ください!
(募集は コチラ から)

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