みんなで創る度会県!度会県民参加型プロジェクト
尾鷲市読んで応援!みんなで考えよう!連載コラム
第7回「度会県民が”ゆるく”つながるために」
これからの地域との関わり方について想像するきっかけとなるコラムの連載第7回をお届けします。
今回は、第5回の執筆者である宇野教授をはじめ東京大学の先生方が「フィールドスタディ型政策協働プログラム」を開始した第一回(2017年度)の参加者4名に寄稿してもらいました。
初めて度会県を訪れてから3年が経過し、4人のうち3人は社会人になっていますが、今なお当時の記憶は彼らの中で鮮やかに残っていて普段の生活にも影響を及ぼしているようです。
そんな4人の思いを今回はお届けします。
物事が一つ一つ思いを込めて行われている丁寧な世界
Q.自己紹介と、度会県との関わりを教えてください。
A.
(坂田)2017年度、フィールドスタディ最初の年に参加した坂田です。現在は卒業して社会人ですが、工学系研究科修士2年のときに尾鷲市九鬼(くき)町を訪れました。
(徐)同じく2017年度に参加しました徐と申します。シェリーと呼ばれています。経済学研究科修士2年に所属していたとき、九鬼町を訪れました。
(斎藤)斎藤と申します。経済学研究科修士1年に所属していたとき、九鬼町を訪れました。
(西村)現在、東京大学大学院教育学研究科修士2年の西村文吾です。学部3年の頃に、九鬼町で長らく放浪してました。よろしくお願いします!
-
(西村)メインの活動以外でも何度か九鬼へふらっと足を運びました。
Q.フィールドスタディではどのようなテーマに基づいて活動しましたか。
また、その活動を通じて知った、度会県民の皆さんに伝えたい九鬼町の素敵なところは何ですか。
A.
(西村)「九鬼に地方と都会を繋ぐ学びの場を創出すること」というテーマに基づいて活動しました。
その中で気づいたのは、九鬼町は時間が止まっているようで止まっていないということです。
私は初めて九鬼を訪れたとき、映画「千と千尋の神隠し」のキャッチコピー「トンネルのむこうは、不思議の町でした」を思い出しました。町をふらつけば、出会うのは地元のお年寄りの方だけで、そのほかは鹿とタヌキとカモメしかいません。街並みは「古き良き」という雰囲気がムンムンと漂っており、昔にタイムスリップしたような錯覚を覚えます。
けれども住民の方とお話ししてみると、そこで起きていることは、人口減少などこれから日本で起こるだろう様々な問題が先取りして起きているように思われました。そのようなギャップを楽しめるところが魅力だと思います。
Q.九鬼町の素敵なところ、他の皆さんはどう感じましたか。
A.
(斎藤)まず、人ですね。個性豊かな方が集まっていると思います。いろんな経験をされていて、面白い話が伺えると思います。皆さん、暖かく迎えてくださるので、コロナ収束後にはぜひ一度訪れてください。
あとは、風景も綺麗ですね。山と海が非常に近く、それらに囲まれるようにして街があります。海も山に囲まれているので、これが海なのか!と初めて訪れた時はびっくりしました。また、車で行くと、山を越えることになるのですが、急に九鬼の街が見えてくるのも違う世界に入り込んだようで、素敵ですね。
(徐)私も風景の美しさだと思います。澄んだ海、綺麗な星空、素直に話してくれる人々、そこにいると大切なことが見えてくるのです。
そして、物事が一つ一つ思いを込めて行われている丁寧な世界です。海辺にボランティア制で運営している綺麗で美味しい和食屋(カフェ)、オリジナルグッズを売っている雑貨屋、歴史のある旅館、懐かしい味がするラーメン屋さん(※)があって、路地に入ると本屋や体験住宅があります。長く居ても飽きないです。
※このラーメン屋さんは2019年に市内の別の場所に移転しました
新しい世界に飛び込むのが怖くなくなりました
Q.九鬼町での経験は、皆さんにどのような影響を与えましたか?
A.
(西村)大きな変化としては、スーパーの刺身コーナーにブリがないかを確認し、そのブリがどこの産地のものであるかを確認することがルーティンとなりました。海なし県に生まれた私にとって、これは九鬼を訪れなければ二度と手にすることがなかった習慣だと思います。
(斎藤)僕はもともと魚中心の食生活でした(笑)。ただ、ブリはそれほど食べなかったのですが、九鬼町に来てブリの真の美味しさを感じました。
(坂田)私も皆さんと同じく、魚がより好きになりました。九鬼町を訪れた時に魚のさばき方を教えていただいたり、おいしいなめろうを作っていただいたりしたのですが、あのとき食べたなめろうの味が忘れられなくて、今でも自分で家で作って食べています(笑)。
(徐)私は、新しい世界に飛び込むのが怖くなくなり、行動できるようになりました。
九鬼に行って町の皆さんに仲良くしてもらって受け取る一方で、自分は何ができるか悩んでいました。一つでもいいから何か皆さんと一緒に行動に移したいという思いで、2018年、九鬼の皆さんが東京まで来てくださったときに東大の学祭に共同出店してブリの照り焼き丼と「とらまき」(※)を販売しました。
初日は雨で販売に苦戦しましたが、初日の夜に作戦を練り直して2日目は完売することができました。また九鬼町の皆さんと何か一緒にやりたいです。
※九鬼町唯一の和菓子屋さんで売られているお菓子
(紹介チラシ http://higashikishu.org/pdf/Higashikisyu_sweets_fin_web_Part16.pdf )
-
(徐)学祭で販売したブリの照り焼き丼。とても美味しかったです。
他の人々とネット上で交流できたら面白い
Q.コロナ後の社会は、人と人との距離を意識することが必要になると言われています。そのような社会であっても度会県民にできることがあるとしたら、それはどんなことでしょうか。
A.
(西村)これからは、日本各地に散らばった度会県民が繋がるチャンスであると思います。有り体なことしか言えませんが、ポストコロナでは「人と人との距離」に対する考え方が変わり、これまで「会う」ということが、ある物質的な空間を共有する必要があったのに対して、これからはその必要はなくなりインターネットの空間さえあれば充分とも考えられるようになりました。
なので、これまで関わりのなかった他プロジェクトの人々とネット上で交流できたら面白いです!
Q. 学生から社会人になって仕事も忙しいと思いますが、働きながらでも離れた地域への関心を維持したり、関わり続けたりするには何が必要だと思いますか。
A.
(西村)遠くの他者に対して「思いを馳せる」ことがいかにして可能になるのかということは、私が大学の研究テーマの一つにしていることで、むしろ私が聞きたいです(笑)。
もっと現実的な話をすれば、当たり前かもしれませんが、実際に顔を突き合わせたり、声を聞いたりして互いの近況報告を行うことが大事だと思います。なかなかわたしは九鬼へ遊びに行くことができていませんが、この間九鬼で出会った高校生が大学生になり東京へ進学したのを機に、彼と東京で会うことができました。とても嬉しかったです。これが実現したのも、彼が連絡してきてくれたからであって、わたしもこまめに連絡を取ろうと思います。
(坂田)フィールドスタディでは通常の観光旅行とは違い、地域の人との対話や町歩きの体験など、貴重な経験をたくさんさせていただきました。そのかいあってか、自分の故郷のように、折に触れて九鬼や尾鷲のことを思い出します。
関心を維持する、関わり続ける、というような能動的な関与でなくても、何かのきっかけで度会県のことが「なんとなくいつも気になっている」という人は思っている以上に多いのではないかなと思います。そのような身からすると、発信いただいている度会県の情報を見るのは毎回楽しみですし、今度ふるさと納税で尾鷲市に寄付しようかなあとも考えています。
もちろんオフラインでの出会いも大事にしつつ、度会県民が”ゆるく”つながっているためには、働きながらでも遠方からでも度会県の今の情報にいつでも触れることができることが一番大事なのかなあと思います。
-
フィールドスタディの最終報告会で地元の方と一緒に(第5回連載の宇野教授より提供)
Q.最後に、九鬼町の方へのメッセージをお願いします!
A.
(西村)九鬼町のみなさん、お元気でしょうか。私は、東京都で生きております。これからの社会、そして私自身の将来も不透明な状態ですが、何とか生き延び、落ち着いたら遊びに行きたいです。そのときお話しできることがあるように、これからの日々を頑張りたいと思います。
(坂田)なかなかすぐにお会いするのは難しい状況ですが、私も九鬼町の皆さん、そしてお世話になった皆さんにまた会いたいなあと思いを募らせる日々です。フィールドスタディでお世話になったのはもう3年も前ですが、九鬼も尾鷲もいろいろと変わってきていると伺っています。機会を見つけて年に1度は遊びに行かせていただいているので、今年はいつ行こうかなあと考え中です。ぜひ今後ともよろしくお願いします!
4人とも、どうもありがとうございました!
実は、2018年に度会県が復活して最初に行われた県民参加型プロジェクト「九鬼かいぞく学校」にも、坂田さんたちには参加してもらっています。(さらに第2回連載の小川さん、第6回の大友さんにも!)
フィールドスタディがきっかけで度会県に来てもらった東大生の皆さんは、フットワークが軽いだけでなく、日本の地方の未来がどうあるべきかを真剣に考えてくれています。
そのような若者たちとご縁が生まれたことを私たちも本当に幸せに思っています。
さて、これまで東京大学の学生と教授の方々に寄稿してもらってきた本コラムですが、次回からは別のテーマでお届けする予定です。
引き続き、度会県民の皆様に、地域とのつながりについて考えるきっかけになるようなコラムをお届けしますので、楽しみにお待ちください!