みんなで創る度会県!度会県民参加型プロジェクト
尾鷲市読んで応援!みんなで考えよう!連載コラム
第6回「人との関わりが地域への愛着につながる」
これからの地域との関わり方について想像するきっかけとなるコラムの連載第6回をお届けします。
今回は、第2回のコラムを執筆した小川さんと共に尾鷲市に滞在していた方からの寄稿となります。
大学院で歴史を学んだ視点から、度会県の過去・現在・未来について想いをつづってもらいました。
この機会を逃すまいと参加を決めました
Q.自己紹介と、度会県との関わりを教えてください。
A.教育関係の仕事をしております、大友勝夫(おおとも・かつお)と申します。2018年度に東大フィールドスタディに参加し、第2回連載の小川智貴さんと共に、尾鷲市の登録有形文化財「見世土井家住宅」(以下「土井見世」といいます)の保存・活用事業に関わりました。
当時は東京大学大学院人文社会系研究科の修士課程1年生で、日本史学を専門に勉強していました。
参考:土井見世ウェブサイト https://www.doimise.com/
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小川さんと共に尾鷲ヤーヤ祭りに参加(2019年2月2日)
Q.なんでフィールドスタディに参加しようと思ったんですか?
A.以前から歴史的建造物に関心があり、旅行でそういった場所を巡ることはしていたのですが、古民家などの地域に根付いた建物が次々に取り壊されている現状に対して何もできないでいることを歯がゆく感じていました。
そんな時、民間の活力で古民家を残す取組に東大フィールドスタディを通じて参画できることを知り、この機会を逃すまいと参加を決めました。
Q.フィールドスタディで尾鷲市に来てビックリしたことはありますか。
A.リアス式海岸の美しい景観、住宅地に隣接していながら海底まで見通すことが出来る澄みきった海、そして漁村の雰囲気を色濃く残す伝統的な町並みは、日本の原風景を見ているようで本当に感動しました。
また、活動中に関わった方々は、どなたも尾鷲という地域を盛り上げ、持続可能な地域社会を作り上げていくために真剣に取り組まれている方ばかりで、次々に新しいアイデアを出し、実行に移していく様子に圧倒されました。本当にこの町は「人」に恵まれているなと感じました。
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尾鷲市九鬼町で撮影した、海底まで見通せる海と養殖いかだ
外から来た人を受け入れ、巻き込んでいく力強さ
Q.フィールドスタディではどのようなテーマに基づいて活動しましたか。
また、その活動を通じて知った、度会県民の皆さんに伝えたい尾鷲市の素敵なところは何ですか。
A.おわせ暮らしサポートセンター(※)の方々と共に、土井見世のシェアオフィス化をテーマとして活動しました。
漁業に加えて林業も盛んな尾鷲市において、山林経営家の邸宅であった土井見世は尾鷲の歴史を象徴する建物であり、この邸宅を民間の力で活用・保存していくために、賛同してくださる人々をどう増やしていくかということを考えました。
活動を通じて多くの地域の方々と関わりましたが、どなたも私たちを気さくに受け入れてくださり、様々な場面で最大限の協力をしてくださりました。外から来た人を抵抗なく受け入れ、巻き込んでいく力強さが素敵だと思いました。
※尾鷲市の空き家や移住に関する相談などを受け付けているNPO法人
土井見世の管理や活用にも取り組む
http://owasegurashi.xsrv.jp/
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土井見世の全体像
Q.逆に、尾鷲市の皆さんに提案したい、度会県民の力を借りて実現できそうなことはありますか。
A.海も山も町も魅力的な地域なので、それらを発信し、広く知ってもらうことが大切だと思います。
身の回りの人に尾鷲市の印象を尋ねてみたことがあるのですが、学校の地理の授業で習った雨温図(=尾鷲市の降水量の多さ)を挙げる人が一番多く、次いで尾鷲ヒノキ、熊野古道という順番でした。まずは尾鷲の持つ魅力を積極的にアピールすることが必要だと思います。
都会の喧騒から距離を置きながら
Q.コロナ後の社会は、人と人との距離を意識することが必要になると言われています。そのような社会であっても度会県民にできることがあるとしたら、それはどんなことでしょうか。
A.現代社会はインターネットの発達で人と人とのつながりやすさは格段に上がった一方、常時つながっていることの弊害も指摘され、また新型コロナウイルスの影響で現実の接触が難しくなったことにより、ますます「適度な距離感」が問われるようになってきました。
度会県は東京・名古屋・大阪などいずれの大都市圏からも離れており、交通上は決して便利な土地柄とは言えないかもしれませんが、一方で地域社会における人のあたたかさや関係性が濃密に残っており、都会の喧騒から距離を置きながら、人と人との距離感を見つめなおす上で、非常に魅力的な地域ではないかと思います。私たちの活動時にも、土井見世の活用案として旅行者向けの高級宿泊所や、「デジタルデトックス」(※)をテーマとした案が出たことがありました。
人と人との距離が問われている今だからこそ、物理的な距離による不便さを壁にしてしまうのではなく、それも含めて来訪者に楽しんでもらう仕掛けに変えていければ良いのではないかと思います。
※デジタルデトックス…インターネットへの依存を防ぐためパソコンやスマートフォンなどの使用を控えること
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土井見世の応接間
身近なものを大切にしてほしいと切に願います
Q.学生から社会人になって仕事も忙しいと思いますが、働きながらでも離れた地域への関心を維持したり、関わり続けたりするには何が必要だと思いますか。
A.「自分にしかない」、あるいは「他地域では味わえない」経験を積むことが必要ではないかと思います。オリジナルの体験を持つことでその地域が強く印象に残り、関心が強まるのではないでしょうか。特にフィールドスタディでは、人との関わりが地域への愛着につながることを強く実感しました。私は今でも、ニュースで尾鷲が取り上げられたりすると、「あの時お世話になった人たちは元気かな」ということが頭をよぎります。
Q.最後に、尾鷲市の方へのメッセージをお願いします!
A.みなさま、活動時には本当にお世話になりました。私がフィールドスタディに参加し、尾鷲市に関わろうと思ったのは、古民家という地域に根付いた文化を守りたい気持ちがきっかけでした。
みなさまの身の回りに存在する物や、古くから続けてこられた生活習慣・行事などは、見慣れてしまうと「どこにでもあるのではないか」と思われるかもしれませんが、意外なところにかけがえのない価値が潜んでいることがあります。利便性の向上によって画一化が進む現代にこそ、各地域の「個性」が鍵になってくると思いますので、是非「身近なもの」を大切にしてほしいと切に願います。
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尾鷲市梶賀町のハラソ祭り(2020年1月13日、土井見世のイベントに参加するため尾鷲を再訪した時に撮影)
大友さん、ありがとうございました。
古民家など地域に根付いたものを守りたいという使命感を持って度会県に来てくれた大友さん。
土井見世を地域に残すため奮闘してくれただけでなく、現地での滞在を通じて自然や人にも魅力を感じ、愛着を持ってもらえたようです。
度会県に興味を持つきっかけは人それぞれですが、そこからさらに深い魅力を知ってもらえるような機会を、我々も提供したいと思っています。