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紀北町引本浦関船祭応援プロジェクト2019

【後編】日本の美しさが残る漁村で引本関船祭を。

約300年。男衆が全力を出し続けてきた祭がある。

人は大切なものを粗末にしない。
守り、磨き、想いを込める。
そうやって愛されてきたものは、時代が経っても輝き続ける。

そしてその輝きから、人は力をもらう。
だからまた、人に大切にされて守り継がれていく。

死ぬことは、冷たく固くなること。
生きることは、あたたかく柔らかいこと。
そして時に、吹き出す汗を光らせて、力む顔を気にもせず、全力で生きる歓びを実感する。

紀北町の引本浦関船祭では、関船を地面から上げることに集中する。
全身全霊を込めて、担ぐ。
担ぎ、揺さぶる、練り込みを行う。
そうして肩にできたコブは、男の勲章だ。

関船祭は、今では小さな町の小さな祭だ。
しかし来場者数を競うような大きな祭にはない、趣がある。
関船祭には出店は無い。酒も吞まない。
約1トンの関船を全力で担ぐ。

気合いで担ぐ。

島国日本、この50年。

かつてカツオ漁で栄え、大いに賑わった引本浦の関船祭。

今も沿道や軒先から観客が見守る。
最近までカツオなどの加工業をしていた元担ぎ手に話を聞いた。

元担ぎ手:先にカツオ漁が無くなるか、私達がいなくなるか。思ったより早くカツオ漁船は一隻もなくなった。この50年でガタがきた。

それでも今も、関船を担ぐ地元の継承者がいる。
町に人が減り、他所からの担ぎ手を受け入れている。

昼休憩のときに、地元の人が魚ごはんのおにぎりを分けてくれた。
魚のダシが香り柔らかい身が入ったおにぎりをみんなでほおばる。
アメリカ人のエリックさんに話を聞いた。
以前は紀北町内の学校にALTとして勤務し、今は大阪で暮らしている。

エリックさん:伝統に関われて感謝。日本の伝統文化を知って感動した。

貝笛もこなすエリックさん。今や頼もしい祭人のひとりだ。

祝儀を渡して小さな子どもを関船に乗せている人がいた。
聞くと子どもが丈夫に育つという。

地元の人:なんでかって?そりゃ氏神さんが乗っとるからや。

他の祭の関係者からも「魚ごはん、食べてき」と声を掛けてもらった。
どうやら引本の人は、優しくて世話焼きの人が多いみたいだ。

そんな梅本さんも元担ぎ手。

梅本さん:あれくらいの子どもの時から、オヤジが担ぐ関船についてまわった。練り込みは景気付けなん。祭の次の日は腫れ上がった肩をたたいてイタズラもした(笑)。

人が暮らすところには、それぞれに大切な思い出が詰まっている。
そしてハレの祭の日を、今もみんな心待ちにしている。
練り込みを一目見ようと、家から出てきた地元の人にも話を聞いた。

地元の人:これがないよーなったら、さみしい。人が減ってるのは三重県だけじゃないやり?

日本の人口減少は歯止めが効かない。
近い未来、諦めなければならないことも増えるのかも知れない。
でも諦めずに踏ん張る。
関船を担ぐ男衆に、そんな未来を重ねたりした。

 グループホームの皆さんの前で練り込み。
観客のご老人の中にはかつては担ぎ手、または担ぎ手に熱い視線を注いでいたかつての少女もいることだろう。

町も人も年を取る。
そして、町も人も年を重ねないと醸し出せない魅力がある。

 蔵や古民家が残る、引本浦の美しい景観のように。
それは日本という国も同じだ。
歴史があり、海に囲まれた島国日本が磨き上げてきた独自の伝統は、世界で唯一無二の魅力がある。

日本のブランド。

11時にスタートし15時に戻ってきた引本神社には、すでに多くの観客。

神社の鳥居の幅を、すれすれに担ぎ込まれていく関船。

男衆は境内で最後の練り込み。

精一杯の力で踏ん張り、何度も何度も関船を担ぎ上げ、揺さぶる。
その都度、会場は拍手で沸き上がる。
10分、15分はそれを繰り返しただろうか。
最後の方は力が及ばず、関船は持ち上がっていない。
でも止めない。諦めない。

全力で持ち上げようとし、砂利を引きずりながらも練り込みを続ける。
気が付けば、会場は男衆と観客の一体感に包まれている。

腹の底から声を出し、気合いで渾身の力を振り絞る担ぎ手たち。
最後の練り込みが終わると、息を切らしてしゃがみ込んだ。
神社には拍手喝采とともに「おつかれさん!ありがとう!」という声が響いた。

担ぎ手に話を聞いた。

前回取材した濵田さん。

濵田さん:町のため、神様のために担がせてもらっている。今年は10名くらい新しい担ぎ手が増えたので、今後も町内外からの参加者が増えると嬉しいです。

今回初めて町外から参加した担ぎ手はどんなやりがいを感じたのだろう。

担ぎ手:やりがい?めちゃくちゃありました!自分だけサボったら関船は上がらない。でも自分だけがんばっても上がらない。大人になってこんな一体感を感じたのは初めて。もう、たまらないですよ。来年も来ます。

全力を出し切った男たちは、清らかで前向きだった。

経済成長を最優先にしてきた日本。
そんな日本が先進国内で先行して向かえる人口減少社会。
急激な人口減少で高齢化が加速する未来では、存続できない物事もある。
でも、伝統は買えない。
失ったら買い戻すこともできない。
伝統は島国日本のブランドそのものだ。

時代を超えて、地域も越えて、大切なものを粗末にしない。
そんな男衆の勇ましさに、力をもらった。
関係人口として町外の人を迎入れ、共に一つの目標に向かう関船祭に、新しい伝統継承の形を見た。

 


 

2018年の引本浦関船祭の記事(前編後編)。
2019年の引本浦関船祭の前編記事。

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