みんなで創る度会県!度会県民参加型プロジェクト
尾鷲市三木里ビーチ・エコプロジェクト
【前編】地域の宝があなたの宝物になる。「三木里ビーチ・エコプロジェクト」
- 誰にも教えたくない。でも、大切なあの人には伝えたい。
「隠れ」と名のつく場所に出会った時、大人はときめきを取り戻し、それをそっと心の宝箱にしまっておきたくなる。
尾鷲市街地から車で15分。
低山に囲まれた小さな集落に、そんな宝物のような場所がある。
三木里海水浴場だ。
取材したのは9月後半の連休。空は霞がかっているが、じわりと汗ばむ陽気の午後。
真夏さながらに波と戯れる家族に出会った。「Hello」と声をかけてみる。
イギリス人、カナダ人、日本人。
皆さん愛知県に住んでいるそうだが、集合場所はいつもここ。
このビーチが気に入り、連休のたびに誘い合い、共に休日を楽しんでいるという。
防砂林の松の前はキャンプ場。彼らは木陰にテントを張り、ふた晩ゆっくり過ごしたそうだ。
シンメトリーな山の合間に望む水平線。入り江の遠浅な海岸に打ち寄せる穏やかな波。ずっと踏みしめていたくなるサラサラの砂浜。
心がときめく。これは、宝箱にしまいたい。
決め手は、ムカデ、麦みそ、盆踊り
「三木里は本当にいいところなんです。ビーチの美しさはもちろん、山には熊野古道が通っているし、町を流れる川の水も澄んでいて、農家さんが作る野菜はめっちゃ美味しい!地元のおかあさんたちが受け継いでいる家庭の味も私好みで、ぜんぶ気に入りました」
目をキラキラ輝かせて語るのは、地域おこし協力隊の藤井友美(ゆみ)さん。
8月に着任したばかりとは思えないほど、三木里愛にあふれている。
このわずかな期間に、なぜそこまで?
「ムカデが出たんです!こんなに太くて長いの!!住み始めてまだ2週間くらいの頃で、もう大パニック」
普通なら、もう帰りたくなるが…。
「近所の人が、みんなで助けに来てくれたんです。ムカデ除けとか色々持って。なんて温かいんだろう…って。あと、麦みそ。ここの集落は各家庭で仕込むんです。めっちゃ美味しくてハマっちゃいました。感動したのは、夏祭りの盆踊り。意味なんて、今まで考えもしなかったんですが、ご先祖様を供養するための踊りなのだと教えてもらって。お墓参りもとても大切にされているんです。代々続けてらっしゃる丁寧な暮らし一つ一つが、とても魅力的なんです」
田舎と呼ばれる多くの地域では、なんら珍しくない事柄ばかりかも知れない。でも、藤井さんがそこに心惹かれたのは、生まれ育った場所が松阪市内の新興住宅街だったから。
前職の貿易事務の仕事に見切りをつけ、名古屋から三重に戻ろうと決めた時も、地元ではなく海辺の田舎で暮らしてみたいと思い、協力隊を募集していた三木里町を選んだ。
生きていくうえで、地域の伝統行事や神仏を祀る習慣がなかったとしても、とりたてて困ることはない。
でもふとした時、天と地に結びつく “何か” がほしくなる。
それはきっと、いのちが遥か遠い昔から結ばれ、繋がれて存在している事実を、再確認したいという潜在的な欲求なのではないだろうか。
藤井さんは、ここで、求めていたものに出会えたのだ。
"浜" は、心のよりどころ
三木里ビーチは隠れスポットとはいえ、年間9,000人もの人が訪れる。
しかし、住人の高齢化が進み、海水浴客をもてなすことやビーチの整備が年々困難になっている。
特に今夏発生したような大きな台風の後は、砂浜に大量の流木やゴミが漂着する。清掃は重労働だ。
ビーチが山間にあるため、10メートル近い倒木が川を下りダイレクトに流れ着くことも多い。
「私らにとって、流木はゴミでしかなかったんよ。でも、世間じゃインテリアのアイテムとして人気があるって教えてくれたのが藤井さん。おかげで視点が変わって、新しい価値に気づくことができたんさ」
森本美深(みゆき)さんは、地区のコミュニティセンターの臨時職員。
藤井さんにとっては家も職場もご近所なので、何かと頼れる存在だ。
森本さんをはじめ地元の人々にとっても、このビーチは心のよりどころとなる大切な浜なのだと教えてくれた。
森本さん:昔よく息子らが兄弟ゲンカすると、いつの間にか一人姿が見えなくなっとる。
「どこにおるん!?」ってケータイに電話すると、決まって「…浜。」って。
私も夫婦ゲンカした時は一人でここへ来たりしてね(笑)。波の音を聞いていると、心がすぅーっと落ち着いてくるんよ。
「夏はよーけ人が遊びに来るんやけど、それ以外の時期は寂しいもんで、なんとかならんかなぁと」
地区会長の宇田正明さんは御浜町出身だが、奥さんが三木里出身でこちらへ移住。
子どもが小さい時はよく浜に連れていき、ここで泳ぎを教えたそうだ。
現在、町の人口は約580人。そのうちの約6割が65歳以上という中、地域の宝として浜を守っていきたいという想いがあっても、地元住民だけでは限界がある。
地域おこし協力隊を募集したのは、そんな経緯からだった。
三木里ビーチ・エコプロジェクト
住民のさまざまな想いを受け、藤井さんが企画したのが、「三木里ビーチ・エコプロジェクト」。
午前中は地元の人と一緒に浜清掃。拾い集めた流木は、ピカピカに磨いてアート作品に。
お昼は三木里の郷土色あふれる料理をバイキング形式で。
午後は自由に浜遊び。貝がらや砂を集めてハンドクラフトも楽しめる。
藤井さん:ただ観光で訪れるより、地元の人と一緒に何かを体験すると、その土地が印象深くなり、特別な場所として心に刻まれる。そしたらきっと、また行きたいと思ってもらえる。浜清掃を単なる作業ではなく、三木里のまちや人の魅力を体感できる楽しいイベントに変えていきたいんです。
地域の未来のカギと言われている関係人口を増やすこと。
それは、家族の絆をはぐくむように、ささやかな幸せを共有することなのかも知れない。
ビーチだけじゃない。三木里町ってどんなとこ?
藤井さんが愛して止まない三木里町。その魅力はビーチだけではない。
まちなかを案内してもらった。
浜清掃の当番をしている方にばったり。よぉ!あぁー!と手を振りあう仲。
「もうムカデ出てこねぇか?なんかあったら、いつでもいうてこいよ」
石垣に咲く彼岸花。こちらには秋の気配。道幅が細いだけで、足どりが弾むのはなぜだろう。
急に道がひらけたと思うと、目前に壁面ジャングルが現れた。
森本さん:この階段から上は「上のほう」、今歩いてたところが「下の道」。どこにも書いてないし、そんな住所ないんやけど、町の人はみんなそう呼んでるんよ。
法念寺の山門は、山海を切り取るフォトフレーム。
三木里小学校。休日にもかかわらず、校長先生がお仕事をされていた。
校長先生:こないだの台風で、校舎の外壁が剥がれちゃってねぇ。10月の運動会には、お客さんがたくさんみえるっていうのに、このままじゃあまりにかわいそうだから、看板で覆ってみたんですよ。
ばんそうこうを貼ってもらい嬉しそうな校舎は、来年の3月をもって休校となる。
最後になるかも知れない運動会にはたくさんの卒業生が帰ってきて、盛大に行われるそうだ。
棚田を抜けて高架を渡る。下を走るのは紀勢本線。
遠くに響く、踏切の音。行きかけた道を足早に戻る。きた。だんだん近づく2つの光。
手を振ると警笛を鳴らして応えてくれた。今日は、なんだかいい一日。
「上のほう」の終点に到着。山林道手前の農道周辺は千畳敷状の地形で、山から町並み、海から空へと、パノラマで三木里が見渡せる。
ここは通称、まくれば。
「まくれる」とは、転がるという意味の方言。
森本さん:なんでそう呼ぶんやろなぁ、誰もわからん(笑)。このへんだけ「まくれば」って呼ぶんさ。
元々の地場産業が林業やから、山で切った木ぃがここでまくれてたんか、それとも猟師が仕留めたイノシシが山からゴロゴロまくれとったんかいな!?
三木里ミステリー。
「下の道」に戻る。賀田湾に注ぐ八十川。
輝く水面に、夕刻の時を知らされる。
約一時間の散策。時計を見ることは一度もなかった。
笑顔があふれる町だ。
盆と正月には、よそで暮らしている若い人も、孫やひ孫まで連れて必ずみんな帰ってくるという理由が、わかるような気がした。
流木と一緒に三木里ビーチで何を拾い集めようか。
あなたにとっての宝物も、たくさん見つかるかもしれない。
イベント概要
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開催日
平成30年10月28日(日) 8:30~15:00
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開催時間
8:30 受付
9:00 流木&ゴミ拾い
11:00 流木アート遊び
12:00 三木里の郷土ごはんバイキング
14:00 ビーチ遊び・クラフト体験
15:00 終了(自由解散。夕日までビーチで過ごすのも◎) -
開催場所
三木里海水浴場
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参加費
一人1,000円、小学生未満無料
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参加条件
―定員
15名 -
持ち物
動きやすい服、汚れてもいい靴、タオル、飲みもの
(トング、ゴミ袋、軍手は会場に用意します) -
お問い合わせ先
―参加申込方法
①氏名(複数いる場合は代表者)
②人数
③住所
④電話番号
⑤Email(あれば)
⑥食物アレルギーの有無
以上を明記して、メールまたは電話でお申込みください。
申込締切は、10月21日(日)。定員になり次第受付を終了します。
Email : mikisato3373@gmail.com
Tel: 080-5293-3373
担当:藤井 友美 -
その他
―交通
JR紀勢本線 三木里駅より徒歩13分 (新宮行 7:53着)
駐車場 あり