みんなで創る度会県!度会県民参加型プロジェクト

度会町こだわりのお米づくりスタートアッププロジェクト

【後編】もっと「食べる」は楽しくなる!体験できる、ほんわか若手米農家の日常。

芋を食べれば、子どもが笑った。
米を食べれば、大人も笑った。
何か特別なことではなく農家の日常を体験したら、みんな穏やかな気分になった。
幸せって案外、そういうことなのかも知れない。
遠くではなく身近にあること。
日本人が古くから大切にしてきたこと。
それが、農業だとすると・・。
それは消費社会で待ったなしのレースに人々が疲弊する前から、すでにそこにあった自然と共に暮らす幸せな生き方。

「このヤギさん、やさしいよ」

ヤギは動物園で見るものではなく、飼うもの。
そんな穏やかな空気に包まれた農業体験イベントの様子をお伝えしたい。

笑顔とトラクター

1月の中旬、度会郡度会町で農業体験のイベントは行われた。

まずは、主催者である農家夫婦、陰地さん(詳細は前編)の田んぼに向かった。
目を輝かせる、陰地盛希さん(以下:盛希さん)。

盛希さん:こんなにたくさんの人が田んぼに来てくれるとは・・。すごい!

参加者は子どもから大人まで、県内外から約20名。
遠くに山を望む田んぼに着くと、大きなトラクターと草刈り機が準備してあった。

農家でない限り、まず乗ることはないであろうトラクターに参加者が実車。
陰地伸哉さん(以下、伸哉さん)にナビゲートしてもらいながら、参加者は田を耕す。
それは農家にとっては日常だが、参加者にとっては非日常体験。

「ぶつかりそうで恐かったけど、楽しかった」
と、参加した子ども。

「クボタやヤンマーは世界的シェアが高いです。農耕民である日本の高い技術力を感じます」
と、参加した大学の先生。
トラクターに乗り、みんな楽しそう。

参加者が一通り農機具を体験したところで、お楽しみの焼き芋の試食。

炭火で焼かれたサツマイモは、地元の農家さんのお手製。

参加した子どももかぶりついていた。

私:熱くないの?

子ども:熱いけど美味しい。

私:どう美味しいの?
子ども:わからんけど美味しい・・、甘い。

私も一口いただいたが、まるでスイートポテトの様に柔らかく、驚くほど甘味がギュッと濃厚。
陰地さんは日常でも炭火でサツマイモやジャガイモを焼き、仕事の合間に食べることもあるという。
何とも羨ましい時間の過ごし方だと思った。

今回のイベントには、度会の地元農家の人たちが応援に来てくれていた。
準備やイベント中の手伝いのほか、田んぼでのイベントには、近くにある自宅のトイレまで貸してくれるというありがたい申し出もあった。
ところで地元の農家さんは、若い陰地夫妻が度会町で農業をすることをどう思っているのだろうか。

地元農家:陰地君に「空いている田んぼを貸して欲しい」といわれたのがきっかけでした。ありがたいですよ。今日みたいなイベントにも若い人がたくさん来てくれて、嬉しいなと思います。

次第に雨が強くなってきたので予定を早めて、陰地さんの自宅でお米の食べ比べを行うことにした。

イノシシのボタン君

ご自宅に到着すると、陰地さんの知り合いのお母ちゃんたちが食事の支度を行っていた。
ここでも広がる、あたたかい輪。

漬物や豚汁もお母ちゃんたちのお手製。少しお話を伺った。

お母ちゃん:外から若者が来るのは嬉しいです。イベントをしてくれるのもすごく良いことと思います。応援したくなるんです。陰地さん、一生懸命やっとるもんで。
私:度会町のいいところってどこですか?
お母ちゃん:人が良いわな。みんなあったかいです。

自信を持って地元の良さを「人の良さ」と断言できること。
世知辛いニュースが流れる時代に、とても大切なことだと思った。

準備が整い、米の食べ比べが始まった。

伸哉さん:毎日の暮らしでお米の味を意識することは少ないと思いますが、品種や育て方によって味に違いがあることを知ってもらえればと思います。

魚沼産コシヒカリ、陰地さんが育てたミルキークイーン、同種の栽培が盛んな茨城産のミルキークイーンを食べ比べ。
正直どれも美味しかったが、それぞれに香りや食感の違いを感じた。
そしてお米が美味しいと、それだけで食事が楽しくなる。

参加者それぞれがお米の味を愉しみ、その後歓談に花を咲かせているころ、陰地さんと近所に暮らす人生の先輩であり友人の仁実(ひとみ)さんが話していたので、私も混ぜていただいた。
仁実さんは猟師でもあり、陰地さんの飲み仲間でもあるという。

仁実さん:食べたいものは獲りに行くのが日常です。鹿でもイノシシでも。
伸哉さん:そういえば仁実さんが飼っているイノシシ、元気ですか?

ヤギだけでなく、ここではイノシシも飼うもの?
仁実さんは山で自身の罠にかかったイノシシを見つけたが身体が小さく、家に持って帰った。
大きくなったら食べようと思っていたのだが、毎日接すると愛着が湧き、ペットにすることになったいう。
ちなみに名前はボタン君。

そんな楽しい会話も束の間、次は陰地さんの倉庫へみんなで移動。

新農耕民族社会

広い倉庫にはいろんな種類の農機具。

こちらでも農機具を体験し、この時期の朝一番の仕事だという30kgの米袋を積む作業などを行い、記念撮影をして今回のイベントは終了。

参加者に感想を伺った。
「農業に接点がなく、今までは外から見ているだけだった。でも実際に体験できるのは貴重。子どもたちも楽しそうだった」
「トラクターに乗ったのは初めてで楽しく、農業を身近に感じた。今日みたいな寒い日も、夏の暑い中でも、米を育てている人の生活を知ることができ、お米を大切にそして美味しく食べようと思った」

主催者の陰地夫妻にも感想を伺った。

盛希さん:「地元をなんとかしたい」そう思っている人が私の周りに多くて、今回のイベントで本当に色々と協力していただいたことが嬉しかったです。

伸哉さん:はじめイベントを企画したときは、何でも一人でやならくては・・出来るのかな・・と心配でしたが、気が付けば色んな人が増えて、友人からは「僕のかーちゃんにも手伝いの声をかけるでな」など、輪が広がっていきました。逆に広がり過ぎて、私自身まとめられるか不安だったのですがまとめる必要はなく、皆さんが自主的に動いてくれたので、委ねるという気持ちに変わりました。次は田植えや収穫もイベントにできればと思います。

 

帰路につく車の中で今日一日を振り返り、なぜ穏やかな気持ちに包まれたのかを私は考えていた。
過剰な消費社会に生き、物やサービスを受けることで幸せが成り立つと定義されがちだった高度経済成長期。
バブルが弾けてもなお、消費に煽られながら生きていると、人は自然と共に生き、人と繋がることで幸せを共有していることを忘れてしまうこともある。
現代に関係人口という言葉がもてはやされるのは、実は地方のためにある言葉ではなく、今回のような人との繋がりや自然と共に生きる日本の良さを改めて感じたいというニーズが都会や町に暮らす人にあるからで、私自身もその一人である気がした。

そしてもう一つのニーズは、地域の若者。
地元の方も語っていたように、陰地夫妻は地域に期待され、また委ねられる関係ができている。
そして地域で加速する耕作放棄地問題にも、彼らはお米の生産と通販という形で挑んでいる。

かつて日本は農耕民族がつくった国だった。
恵まれた気候、風土は現代の日本にも残っている。
新たな時代の農業への挑戦は、すでに始まっている。

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