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尾鷲市巡礼から定住へプロジェクト

【前編】巡礼から定住へプロジェクト

深い森とリアス海岸。旅情を掻き立てる紀伊半島。

どんよりとした曇り空の下、白い息を吐きながら、年明け1月12日に尾鷲で行われる「巡礼から定住へプロジェクト第1弾」のイベント主催者を訪ねるために汽車に乗った。
今年、世界遺産登録15周年を迎えた熊野古道は、その昔、聖地熊野三山を目指した参詣道。
神道の伊勢からは伊勢路、修験道の吉野からは大峯奥駈路、仏教(密教)の高野山からは小辺路と、異なる三つの宗教の聖地などから熊野三山まで道が続き、それが世界的に貴重な価値として認められ世界遺産になった。

私が暮らす津から尾鷲まで、高速道路を使えば車で1時間強で着く。
しかし今回汽車を選んだのには訳があった。
蟻の熊野詣と言われる程に賑わった昔の巡礼者は、徒歩で山を越えて向かった。

私は少しでも巡礼者がどんな感じの風景を眺めながら聖地に向かったのか、汽車からじっくりと眺めたかったのだ。
特急ワイドビュー南紀号は津駅を出発。
冷え切っていた体は温まり、ガタゴトと揺れる列車が心地よく、ついうとうと眠ってしまった。

目が覚めると、車窓にはのどかな農村の風景。

次は三瀬谷駅と案内がある。
眠っている間に、紀伊半島に入っていた。

三瀬谷駅を越えた辺りから、深い森に入る。
紀伊半島は針葉樹が多いため、冬でも緑の木々が生い茂る山を眺められる。

時折見せる渓谷に心が躍る。

山からの眺めを愉しんだ後は森を降下していく。
乗車から1時間半くらい過ぎると港町の紀伊長島駅に近づく。

「あ、海だ!」車窓から望むリアス海岸が旅情を刺激する。

2時間弱で尾鷲駅に着くと曇り空は快晴に変わっていた。

トンビの声を聞きながら10分くらい歩き、「移住から定住へ」のイベント会場となる土井見世へと向かう。

着くと噂は聞いていたものの、予想以上の立派な建物だった。
出迎えてくれたのはおわせ暮らしサポートセンター(以下:おわせサポセン)の木島さん、尾鷲で食堂・喫茶 網干場やトンガ坂文庫を立ち上げた豊田さん、染物職人の赤坂さん。
まずは記念写真をパシャ。

  • 左から豊田さん、木島さん、赤坂さん

つながる「場」づくり

国登録文化財に指定されている土井見世邸は、昭和初期建築の和風モダニズム設計。

尾鷲市有数の山林経営者の住宅で、現在はおわせサポセンが借り入れ、シェアオフィスやコワーキングスペースとして活用を開始し、イベントなども開催。土井見世を案内してもらいながらお話をうかがった。

木島さん:前回行った「熊野古道一箱古本市」には県外からも合わせて20以上の出店者が集まりました。実は土井見世邸に面している道も、熊野古道なんですよ。

道から見える山は、美しい石畳が特長の熊野古道馬越峠のある天狗倉山。

木島さん:馬越峠には年間約3万人も観光客が訪れています。でも、尾鷲の町に立ち寄る人は少ないです。

木島さんは、東京出身の元尾鷲市地域おこし協力隊。
任期を終え、今はおわせサポセンの代表を務める。
そんな木島さんは言う。

木島さん:水産業や林業が盛んな尾鷲には色んな魅力がありますが、やっぱり人かなって。

おわせサポセンは土井見世を、尾鷲へ訪れた人と地元の人の交流の場にすることも目的としている。
今年はその整備を進める期間だという。

今回のイベントは「巡礼と定住プロジェクト第1弾」として行われる。
その内容を度会県民参加型プロジェクトでもお伝えしたい。
午前11時から午後5時まで、「知る」「食べる」「つくる」の三部構成で行われる。
「知る」ではテーマを熊野古道伊勢路で、伊勢路巡礼の研究者、伊藤 文彦さんを講師に招いたトークライブ。
「食べる」は、尾鷲市ふるさと納税返礼品の試食会。
「つくる」では京都から型染職人の赤坂 武敏さんに型紙を教えてもらい、オリジナルトートバッグを作成。

木島さんと一緒にプロジェクトを企画する豊田さんが、伊勢路巡礼の研究者、伊藤先生にトークライブを依頼したときの話を教えてくれた。

豊田さん:伊藤先生に教えてもらったのですが、尾鷲の町は巡礼者が峠越えをして辿り着き、ほっとする場所だったそうです。熊野三山まで熊野古道の要所に休める宿や寺があります。そして実際にそのような宿で巡礼者が定住することもあったそうです。そのお話を聞いて「先生、それ!」って。まさに今回のプロジェクトの最終的な狙いはそこなんです。

豊田さんも東京出身の元尾鷲市地域おこし協力隊。
尾鷲市の漁村、九鬼で一軒もなくなってしまった飲食店を、地域の人と復活させた「食堂・喫茶 網干場(あばば)」はテレビの全国放送でも特集されるなど注目を集めている(関連する昨年度の記事はこちら)。

そんな九鬼の海や土井見世、名産のブリやエビなどを型染の絵柄で考案した赤坂さんは、海外アーティストとのコラボレーション制作やフランスでデモンストレーションをした経緯を持つ京都在住の染物職人。

尾鷲の印象を聞いた。

赤坂さん:尾鷲にきて一番始めに九鬼へ行ったんです。父型の実家が岩手の漁村なので、なんとなく懐かしい風景の九鬼が好きになりました。

木島さん:実は密かに「赤坂さんも移住してこないかなって」と狙ってます(笑)。最近まで大漁旗を作っていた工房もあるので型染にも使えますよ。

赤坂さん:いや、京都での家族の暮らしもあるので(笑)。でも、いいなー。

尾鷲にはいろいろある。
染め物工房、縫製工場、林業が盛んなので立派で趣のある古民家の空き屋もある。

豊田さん:伊藤先生は熊野古道伊勢路の研究の一環で、ネガティブとポジティブの発言を統計として研究をしていて、尾鷲ではポジティブな発言の方が多く残っているらしいんです。峠を越えてほっとして、美味しい魚を食べる。それを迎え入れる地元の人も明るい。

太陽の光が燦々と降り注ぐ海では魚が捕れ、紀伊半島の深い森では木が採れる。
どこかしら明るい人が多いのは、自然に恵まれた環境で育つ地域の市民性だろうか。

新しい巡礼のかたちは、関係人口をつくる。

東大院をやめ、尾鷲に移住して6年目を迎えた豊田さん。
移住したばかりの時から、どのような変化があったのだろう。

豊田さん:こっちにきて九鬼の人などと一緒に何かを作るようになり、人を受け入れる側になったと思います。食堂のお客さんを受け入れたり。企画したイベントで大学生などを受け入れるのもそうです。

一緒に行動することが多い、木島さんもうなずく。

木島さん:でも「もてなすだけはやめよう」と、よく話し合うんですよ。

豊田さん:尾鷲にきてもらって、一緒に何かするのがいいと思うんです。僕が今尾鷲で暮らしている理由は、やることがあるから。トンガ坂文庫や今回のプロジェクトもそうですが、手伝っているうちにやるようになった。でも押しつけみたいな感じじゃない繋がり方です。それと尾鷲にはサバサバしている人が多いのも、押しつけ感がない繋がりの要因なのかも知れません。

木島さん:ハマる人はハマる。尾鷲に通ったり、移住した人ってそんな感じです。私はそういう人と尾鷲でおもしろいことをやってる人を繋げるのが好きです。でも干渉はせず、あとは勝手にどうぞと。そういうゆるい繋がりは、土井見世という場所でも起こっています。土井見世の門を開けてたら地元の人が「ちょっと中を見せて」とか、人が集まって声がしていたら、そこにまた人が集まってくるとか。ここで仕事をしていると、玄関ではなく縁側から人が訪れてくれます。ここは居るだけで、そういう「場」が作られていく環境です。

最後に豊田さんはこう残した。

豊田さん:そういった人のゆるい繋がりが関係人口になって、将来的に移住する人も出てくるかも知れない。でも「かも知れない」レベルで考えているだけなので古道歩きが好きな人も、熊野古道を歩いたことがない人も、イベントへ気軽に遊びにきてもらえたら嬉しいです。

尾鷲の魅力を語る二人の姿は、もはや移住者ではなく尾鷲の人だと思った。
そんな二人が感じている尾鷲の魅力を「知る」「たべる」「つくる」ことができるイベント「巡礼から定住へ」。
いろんな地域にゆるい繋がりを持つことは、自分の居場所をつくることにもなる。
今、各地域にそういう「場」ができている。
「場」は人がいて、繋がって成り立つ。

あなたがいつでも行ける「尾鷲の場」へ訪れることをきっかけに、今回の「巡礼から定住へプロジェクト」に参加してみませんか。
日本人の巡礼のルーツやまだ知らないディープな尾鷲との出会いは、あなたの人生という旅にほっとするひとときを与えてくれるかも知れません。

 


 

昨年度の尾鷲市のプロジェクト記事(九鬼かいぞく学校 前編後編)。

 


 

おまけの話

せっかく港町の尾鷲に来たのだからと、汽車を待つ時間を使って地元の居酒屋に立ち寄りました。

おつまみセットで、季節の海の幸を堪能。
尾鷲へ行けば「どウマい」グルメがあなたを待っています。

イベント概要

  • 開催日

    2020年1月12日(日)

  • 開催時間

    第1部/11:00~12:00 トークライブ
    第2部/12:00~14:00 ふるさと納税返礼品試食会
    第3部/14:00~16:00 型染ワークショップ

  • 開催場所

    土井見世(三重県尾鷲市朝日町14-2)

  • 参加費

    無料(第3部の型染ワークショップは材料費2,000円必要)

  • 参加条件

    どなたでもご参加いただけます
    ※第2部のふるさと納税返礼品試食会のみのご参加はご遠慮ください

  • お問い合わせ先

    おわせ暮らしサポートセンター 
    owasegurashi@gmail.com
    0597-37-4010  担当:中尾

  • その他

    申込方法:事前申込制
    https://www.doimise.com/junrei/の申込みフォームまで
    もしくは、上記お問い合わせ先のメールアドレス、お電話にて

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