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度会町お米づくりから考える地域の伝統継承プロジェクト

【前編】お米づくりから考える地域の伝統継承プロジェクト

移住者農家が眺めている風景

出張や旅行の際は、準備にスマホの充電器のチェックは欠かせない。ちょっとだけ準備を怠り、数%しかバッテリーが残っていないスマホを頼りに目的地を探すときの焦りとやるせなさ。そんなとき、スマホは怠慢な私を責め立てる。いや、スマホは責め立てない。何も言わない。バッテリーが切れたら、うんともすんとも。スマホを手で温め続けたら、少しだけバッテリーが回復する機能があったらいいのに。そんな絵空事を思いながら、今にも雨が降り出しそうな空のもと、山里に向かった。

昨年の記事にも書いた、度会郡度会町にある米農家のおんじ屋。今年は7.5ha(東京ドーム約1.6個分)に面積を広げた田んぼで収穫するのはミルキークイーンという種類の米のみ。

▲全国へ出荷されるおんじ屋のミルキークイーン

それらの大半をインターネットで販売し売り切る、若手農家の夫婦だ。おんじ屋を運営するのは夫の陰地 伸哉さんと妻の陰地 盛希さん。今年は新しい試みも行っているという。

伸哉さん:餅の加工販売をやろうと思って、設備を作りました。

 

順調に進んでいる米農家からもう一歩前へ。自作の加工道具も作る伸哉さんはもの作りが好きだという。

農機具に加えてまた機械が増えますね、と盛希さんに訪ねると

盛希さん:そうなんです。減価償却が・・。

と笑う。そんなほんわかとした二人が醸し出す空気には、なんだか癒される。昨年の度会県プロジェクトは、田んぼでトラクターの実車や米の食べ比べのイベントを行い、子どもやその親世代、また地域の方々にも協力いただき楽しい会だった。今年のイベントには、餅つきもあると教えてくれた。

伸哉さん:昔はどの家にも臼と杵があって正月用の餅を突いてました。そういった日本の農耕文化をお一人でもお子さん連れでも楽しく体験してもらえたらと思います。

さらに、移住者農家だからこそ知っている度会町の魅力に触れるプチツアーも同日に行う。

盛希さん:地元の農家の人に教えてもらった場所がとてもいい感じで。

農家や猟師でなければ、地元の人でも知り得ない場所も当日は案内予定。取材の日は伸哉さんが好きだという清流宮川の景色を観に行った。

伸哉さん:橋の上から川を眺めることがあっても、下から観るこの景色が好きで。

視界にある人工物は橋くらい。カーブする川と森、そして空が一枚の絵画のようで美しさを感じるとともに、自然への畏怖も感じた。伸哉さんはいう。

伸哉さん:田んぼに行くのが怖いときもあったんです。

  • 左 伸哉さん、右 盛希さん。

飼い猪、ボタン君のその後。

田んぼに行くのが怖いとは、どういうことなのだろう。

伸哉さん:いや、大層なことではなく、田んぼでハチに刺されて妻に病院へ運んでもらったり、今年も獣害にあったり。台風で稲穂が倒れる被害もありました。でもなんとか収穫して。そういえば稲を刈り取っているときに、コンバインの先にあるフォーク状の分草杆に、隠れていた猪がひょっこり乗ったこともありました。えーって。逃げたので慌てて追いかけました。田んぼにおると完全アウェイというか、自然に馴染み切るにはまだまだです。

盛希さん:夕方になると、あちこちにいっぱい獣の赤い目が見えるんです。もののけの世界みたいで怖いです。なので知り合いの猟師さんと話をしているともっと生々しいというか、たくましいなと思います。

昨年のイベント当日、私もその猟師さんと話をさせてもらったがとてもユニークであり、自然とともに生きる強さを感じた。以前も書いたが、こんなエピソードが印象に残っている。罠に掛かった猪がまだ子どもで売り物にならなかったので、自宅に連れて帰り飼って大きく育ててから売ることにしていた。名前をボタン君と名付けたが、飼っているうちに愛着が湧いてきて、売りには出せなくなってしまったらしい。その後のボタン君はどうなったのだろう。

盛希さん:ボタン君、めっちゃ大きくなってます。それとその猟師さんが言うには、ボタン君は食事時になるとエサをいれるお皿を持ってくるようになったんだそうです。本当かは分かりませんが(笑)。

猟師さんは鴨が食べたければ撃ちにいき、魚が食べたければ釣りにいく。陰地ご夫妻は、鴨鍋パーティーにも誘われたりして田舎暮らしを楽しんでいる。

伸哉さん:とある猟師さんから、ちょっと森を見てきて欲しいと頼まれて一人で森に入ったんです。人の臭いをつけたらアカンと言われたのですが、どうすればいいのかよく分からなくて。そしてやっぱり、獣がいる森の中に一人でいるのは怖かったです。

自然を怖いと思うことは、大切な人を怖いと思うことに似ている。大切な人に対して畏敬の念がある分だけ、裏切られることや失うことを怖れる畏怖の念が生まれる。畏怖と畏敬。どちらだけで成り立つことはない。自然が人間を育むそのものだとすれば、怖いということはそれだけ自然に敬意があるということ。

私:自然に生かされているって感じますか?

伸哉さん:それはめっちゃ感じます。

盛希さん:山に囲まれた田んぼで仕事をしていると、自分たちはちっぽけだと思います。

暮らしの中にある、やさしい空気。

▲盛希さんが以前にウインドファームから撮影した写真。

今回、陰地ご夫妻が企画しているプチツアーの中に獅子ヶ岳にあるウインドファームに車で行き、伊勢湾を望む絶景を眺める内容もあると聞き、案内していただいた。道中前を走る陰地ご夫妻の車が駐まった。飼っているヤギの世話をしに行くらしい。そういえば昨年の取材のとき、ご夫妻はヤギを飼いたいといっており、念願が叶ったのだ。

伸哉さん:知り合いに譲ってもらったのですが、この子ちょっと気性が荒くて・・。

ご夫妻が世話を終えて車に戻ろうとすると、ヤギが鳴き始めた。ヤギからお二人が離れてその距離が遠のいて行くほどに、ヤギの鳴き声は大きく激しくなっていった。

盛希さん:なんか切ないでしょ。

ほんわかとしたお二人と、気性の荒いヤギという関係性。陰地ご夫妻の暮らしには、やさしい空気が流れている。ヤギと離れ、車で20分ほど走るとウインドファームに到着。

当日は雨だったが、それはそれで晴の日とは違う味わいがあった。

食べて笑って、語って笑う。スマホを見る間も忘れるほどに。

ここで陰地ご夫妻と別れ、帰りは一人で気になる風景を撮影することにした。

山道を走りながらゆっくりと辺りを見渡せば、雨に濡れる植物がなぜか魅力的に見えた。もしかしたら普段は、そのような植物に視線すら向けていなかったのかも知れない。

新幹線や飛行機などで高速移動していては、見えない景色がある。やわらかい陰地ご夫妻の暮らしの空気に触れたり、地元の農家がおすすめする景色を眺めることは実は贅沢なことで、急ぎ過ぎている荒れた暮らしに潤いを与えてくれる気がした。

雨に濡れる植物のように、風に揺れる稲穂のように、人も同じ生き物だから自然に抱かれていると感じることは、時に必要なのかも知れない。

今回のイベントは、夜会もあるとのこと。

盛希さん:夜は音楽やお酒、お雑煮とともに農村地域や夢などについてまったり語りたいです。

私は猟師さんと、ボタン君の話をしたいと思う。参加者が思いおもいに過ごせる余白のあるイベントで、制約も無さ過ぎるので、うっかりすれば心の鍵を外しっぱなしになりそうだ。

 


 

昨年度のこだわりのお米づくりスタートアッププロジェクトの記事(前編後編)。

 


 

イベント概要

  • 開催日

    12月14日(土)

  • 開催時間

    10:00~15:00 / 夜の部17:00~

  • 開催場所

    おんじ屋
    〒516-2103 三重県度会郡度会町棚橋865-2

  • 参加費

    1,000円(未就学児は無料)
    ※夜の部は別途

  • 参加条件

    どなたでも参加いただけます

  • お問い合わせ先

    おんじ屋
    email:info.onjiya@gmail.com
    tel:050-1290-2039
    担当:陰地(おんじ)

  • その他

    ※当日の流れ※ (内容は当日変更となる場合があります)
    昼の部
    10時/宮リバー度会パーク集合
       おんじ屋へ移動、昔ながらのお餅つき
    12時/お昼ごはん(豚汁、ぜんざいも出る予定です)
    13時/度会町内の田んぼ風景&ウィンドファーム(風力発電)見学
    15時/一旦解散@宮リバー度会パーク
    夜の部
    17時/夜会(自由参加)
       音楽とお酒とお雑煮とともに農村地域や夢などについてまったり語ろう

    ※宿泊について※
    スタッフ宅でよければ手配いたします。ご希望の方はご相談ください

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