度会県民参加型プロジェクト

<度会町>こだわりのお米づくりスタートアッププロジェクト/1月12日開催

もっと「食べる」は楽しくなる!体験できる、ほんわか若手米農家の日常。(前編)

パソコンもスマホも、電気は食うが米は食わない。
車も船も、油は食うが米は食わない。

私たちは米を主食とし、米を炊いたものを「ごはん」と呼ぶ。
おにぎりを持ってお出かけをしたり、正月には餅を食う。
小腹が空けばせんべいを囓り、夜がくれば日本酒をキュッと。

シメはご当地のお茶漬けで、なんていうのも風情があっていい。

私たち日本人にとって米との暮らしは切っても切れない。
時代を遡れば、米を年貢として納めてきた歴史もあり、当時の米は今でいうところの貨幣の役割の一部を担ってきた。
年間1,500回に及ぶ伊勢神宮の祭の中でも、一番重要な祭とされる神嘗祭では新穀が奉納される。
明治期にグレゴリオ暦(太陽暦)に変わったが、それまで主流だったのは満月の周期を規準とした太陰歴(正式には太陽太陰歴)で庶民の間に広がっていた伊勢暦は、稲作や農業や漁業などのための暦でもあった。
今のような天気予報のない時代、農業や漁業などにおいて天気を予想することは困難だが必要なことだった。

現代社会に生きる私たちは、目の前のパソコンやスマホと暮らしている場合が多い。
風が吹こうが、雨が降ろうが、パソコンやスマホは動き続ける。
従って仕事においても、天気をそれほど敏感に気にする必要がない人も多い。
しかし稲穂は風に揺られ、雨に打たれる。

秋にたわわに実る収穫時の稲穂は台風の影響を受けやすく、稲刈りのタイミングは農家にとって悩みの種でもある。

「夫婦で冷えピタを貼って、稲刈りをしたこともありました」
台風前に夫婦揃って風邪を引いてしまったときのエピソードを、自然の力と共に生きる農家夫婦は笑いながら話してくれた。
今回はそんな農家夫婦の元へ取材に伺った。

 

−−−−アラサー世代の移住者農家

秋が深まる11月の末。

訪れた度会郡度会町は人口約8,000人(平成27年)。

伊勢茶の栽培が盛んで、山に囲まれ、清流日本一に選ばれた宮川が流れる山里だ。

▲左:盛希さん、右:伸哉さん。

迎えてくれたのは陰地夫妻。
夫の伸哉さん(32歳)の生まれ育ちは三重県南部の熊野市(人口約17,000人・平成30年)。
その後三重県四日市市(人口約312,000人・平成30年)で就職。

伸哉さん:若いときは都市部への憧れがありました。でも、やっぱり田舎で暮らしたいとなり、田舎で暮らすなら農業をしようと。当時農業への関心はぜんぜんありませんでした。

その後、伸哉さんは四日市での仕事をやめ、設計、塾、地所、農園などを展開する企業に就職し、度会町で米づくりを開始した。

妻の盛希さん(28歳)の生まれ育ちは、山梨県甲府市(人口約189,000人・平成30年)。
大学で地域づくりや地域再生の勉強をしていた盛希さんは、野菜の直販をする農家に出会い農業に興味を持った。

盛希さん:流行に流されることで出来上がっている都市部の生活に、私自身が合っていないと感じていました。

盛希さんは伸哉さんと同じ企業に就職し、当時は奈良県にある畑で野菜づくりを担当。
二人の出会いは同僚というカタチだったが、結婚をして盛希さんは度会町に嫁いだ。

そして企業から独立して、今は二人でおんじ屋として、ミルキークイーンという品種の米の専門農家を営んでいる。

東京ドームの敷地より大きい、6ヘクタール(60,000平方メートル)の田んぼで作られたおんじ屋の米は、主にインターネットで販売。
度会町は山や川の影響で一日の寒暖差が程よくあり、お茶や米づくりに適しているという。
そしておんじ屋の米は、毎年完売するほどの人気だ。
そんな米を作る伸哉さんには、今の米づくりの基礎となる考え方に至るきっかけとなった出来事があった。

伸哉さん:同僚だったころ、彼女(盛希さん)が体調を崩した時期があって。その時、体に良い食べ物を食べさせてあげたいって思いました。

盛希さんは若くして癌と闘い、奇跡の生還を果たした。

盛希さん:食べ物の大切さをその時に知りました。本当に必要なものや自分がやりたいことは何なのか、自分自身と向き合うことができました。

とても優しく、ほわんとした穏やかな口調でお話をする陰地夫妻だが、若くして大きな山場を切り抜けていた。
本当に困ったときに人の優しさに触れることで、人は優しさの意味を知ることができる。

 

−−−−時代のベクトル

地域や農業と書くと、どうしても高齢化や耕作放棄地の課題が話題となることが多い。
しかし、陰地夫妻と話をしていると、そのほわんとした幸せな空気感から、地域での暮らしを楽しんでいるように感じる。

伸哉さん:度会町にきて、農業をやっている人からお裾分けをもらうことが多いです。しかも大量に。すごい量の柿をもらったり。多分もうすぐ、食卓は里芋でいっぱいになります。

盛希さん:こっちに来て感じているのは、こっちの人は野菜を収穫するより、人にあげることに喜びを感じているなと。野菜コミュニケーションだなと。

そして盛希さんは続けた。

▲取材中、倉庫で近所のおじいさんと世間話をする盛希さん。

盛希さん:ここで暮らしていると、ちょっとしたことが幸せに思えてきます。

もちろん、田舎暮らしだけが素晴らしい暮らし方だと書きたい訳ではない。
しかし、高級車に乗り、高層マンションに暮らし、有名ワインをすすることが、幸せに暮らすために必要な条件ではない。

食卓いっぱいに埋め尽くされた、お裾分けの里芋料理に舌鼓を打ちながら明日の天気を想い、満点の星空をのんびり眺める夜。
そこにおいしい地酒やお茶があれば、どれだけ幸せな暮らしだろうか。

こんな景色が眺めることができるおんじ屋の田んぼで、盛希さんの話を聞いて、そんなことを想った。
時代は常に変化していて、そのベクトルはスマホ片手に米を育てる陰地夫妻のような、自然派指向へとシフトしてきているのではないだろうか。

 

−−−−人に必要なもの

盛希さん:同じミルキークイーンの苗でも、育てた人によって味が違うんですよ。

今回のプロジェクトは、陰地夫妻が育てたお米の食べ比べや焼きいもを食べるイベント。

また、陰地夫妻の田んぼと過ごす日常を体験でき、農機具の運転なども企画している。

▲耕耘機のスピードのアイコンは、ウサギとカメが多いと楽しげに教えてくれた。

実際の現場でしか体験できない陰地夫妻流の楽しい農業を通じて生産者と消費者が繋がり、そこから関係人口を作ろうという試みだ。
ところで陰地夫妻の育てる米には、どんなこだわりがあるのだろうか。

おんじ屋の田んぼには、豊富な養分を含んだ山の水を使っている。
山の麓に池を作り、必要な水は田んぼへ、余った水は宮川へと放流。
つまり、清流日本一になる水を使って稲を育てている。
農法はいわゆる有機栽培の循環農法。
田んぼで収穫したあとの籾殻、糠、菌を繁殖させた自然本来のカタチに近い土で稲を育てる。
有機栽培で土を作る場合、稲により多くの栄養を運べるように、本来そこにはない有機物を土に混ぜることもあるが・・、

伸哉さん:有機栽培でもいろんな種類がありますが、僕の場合は本来そこにないものをなるべく使わないのが理想的な農法だと思っています。あと、耕耘機で何度も土を耕しふかふかの土にして、菌の繁殖を加速させるという考え方もあります。しかし僕の場合は、何度も耕耘しません。そもそもそんなに栄養のある土は自然界には存在しないので。自然に近い製法で育てるからこそ、人の体に必要なものが作れると思っています。できれば耕耘せずに稲を育てる農法もあるので、いつかはやってみたいです。

人の体に必要な食べ物。
自然をベースにした考え方がそこにはあった。

伸哉さん:味だけに捕らわれている食品が、多すぎると思うんです。

糖度や食べやすさを売りにする果物や野菜。
確かに人間は、数字や利便性に弱い。
しかし人間は自然が生んだ生き物。
本能的に自然に近いカタチで作られた食べ物を食べたくなるは、その証拠なのかも知れない。

陰地夫妻の話をきいていると、もっと丁寧に食べることに向き合いたくなった。
そうすればきっと、食べることが今より楽しくなる。
そんなことを想いながらの帰り道に、清流宮川を眺めていた。

機械のように電気や油ではなく、人はいろいろな食べ物を食べ、複雑な細胞の仕組みで生きている。
一方、天気で気持ちが変わることもあるくらい、人間にはシンプルな一面もある。
稲穂は風に吹かれ、雨に打たれて米となる。
人の心も時に風に吹かれ、雨に打たれる。

しかし太陽は、そんな生き物たちの命を育てている。
なんだか今日の夕食はしっかりと米を噛みしめ、じっくりと味わいたいと思った。

▲陰地夫妻は地図に二人で行った場所を色で塗っている。仲むつまじいご夫妻は私を迎えてくれたように、あなたも温かく迎えてくれる。

日常では味わえない農家の一日を体験することで、あなたの「食べる」がもっと楽しくなるのかも知れない。

 


 

度会町・こだわりのお米づくりスタートアッププロジェクト

―日程
平成31年1月12日(土)

―集合場所
宮リバー度会パーク

―集合時間
1000

―解散時間
1500

―内容
①農家体験 トラクター 草刈 焼き芋(田んぼにて)
②お米の食べ比べ 座談会(陰地さん宅にて)
③農業機械(コンバインなど)見学(陰地さん倉庫にて)
*雨天時は内容が変更になります。

―注意事項
農作業ができる服装、防寒着、長靴等でご参加ください。

―参加費用
1,000

―目的
スーパーでお米を買う人びとの中には、田植えや稲刈りといったメインイベント以外にどのような農作業があるのか知らない人が多く、年間を通じた米づくりのスタート時点から参加者に関わりを持ってもらうことで、生産者や地域の農業に対する理解を深め、地域との継続的な関係性を築くことを目指しています。

 


 

度会県プロジェクト参加申込について

―申込時記入事項
①氏名
②住所
③電話番号(当日連絡がつく番号)
④メールアドレス

―〆切
1月8日(火)

―定員
5名 ※定員になり次第受付終了

―申込先
おんじ屋 代表 陰地伸哉
Mail info.onjiya@gmail.com
携帯 090-1740-3168