度会県民参加型プロジェクト

<尾鷲市>三木里ビーチ・エコプロジェクト/10月28日開催

地域の宝があなたの宝物になる。「三木里ビーチ・エコプロジェクト」(後編)

見事な晴天。

穏やかな風。

毎週のように台風に見舞われていた中、プロジェクト当日のこの日、主催チームの想いが天に届いたのは…

龍のおかげかもしれない。

参加してくれる人々のために、流木で何か作れないだろうか。そんなひと声から生まれた。

発案した人、共感した人、作った人。経験者なんて一人もいない。でも、否定する人さえいなければ、地元の人だけでこんなにインパクトのあるものが作れる。三木里町民は、龍神さまにも認められたアーティスト集団だ。

 

——9時。「三木里ビーチエコプロジェクト」はじまりはじまり。

まずはプロジェクトチーム側から自己紹介。地元や尾鷲市内から集まった人数は参加者よりも多かった。

定期清掃は担当制のため、それ以外の住民は海開き前の一斉清掃に参加するだけのことが多い。まずは地元の人の協力が必要と、中心メンバーが町内の掲示板などで地道に告知した成果だ。

近隣地区の地域おこし協力隊も加勢。村の畑仕事や大工さんのように、お互いの現場に自然と駆けつけ合う関係性が、移住者である協力隊のあいだにも築かれている。

参加者は10名。愛知や兵庫から来た人もいた。はるばる来た理由を一人に尋ねたら「海が好きだから、遠くの海も自分ごと」と答えてくれた。

 

 

地元の人がカニを見せてくれた。「何十年ぶりやろ。名前はわからんけど、まだおるんやなぁ」

久々に浜に来たようだった。変わらぬ姿で待っていたカニをてのひらに、よみがえる思い出はどんな風景だろう。

 

着々と集められるゴミ。

重たいもの、大きいものもたくさんある。

ブイの量にやや驚く。

嵐などで確実に漂流する可能性が高いブイ。だがその中身の素材は発泡スチロールだ。日光で劣化するとバラバラになっていくそうだが自然分解はされない。

貝の反逆精神。

かけらはどんなに砕けてもこうして残る。小さい破片は魚が食べ、それを私たち人間が食べている。

マイクロプラスティック問題は、ポイ捨てをなくすだけでは解決しない。分解されない素材そのものの使用を考えないといけない。海に行けば現実と向き合える。

休憩をはさみながら約二時間。総勢30名が人間の暮らしから自然界に放出されたものを拾い集めていった。

ゴミ一つなくわずかに流木が残るだけの浜。やはり本来の姿は美しい。あたり一面に漂着したゴミが散乱していたのに、たった二時間でこれだけ見違える。

じゃあもし、倍の60人いたら、一泊二日でやったら、毎月できたら。

手をつけるまでは気が遠くなるように感じる問題も、やってみたら意外とあっさり解決できるのではないだろうか。そこに多くの人の共感と手が集まれば。

 

——11時。流木あそび。

 

 

流木に水をかけながら磨いていくと、表皮が剥がれてツヤツヤになる。拾ったままでは価値は出ない。磨いてこそ、手をかけてこそアートになる。しかも製材所では嫌われるような、へんてこなカタチのほうが流木界では人気が高い。ある年齢を越えたら、生きる場所を変えたら、人間も生きやすくなったりするものだと、流木に人の人生が重なる。

 

——12時。ごはんのじかん。

いつのまにか、公民館では地元のおかあさんたち10人がせっせと郷土料理を仕込んでいた。

 

鍋敷きも今日のための手作り。

さかなごはんのおにぎり。贅沢に脂が乗ったかんぱちと炊き込んでいる。味付けはしょうゆだけ。まぶされたネギの香味が添う。

早く出しておくれと言わんばかりに土鍋に所狭しと入る田楽。こんにゃく芋もこんにゃくも三木里農家さんの手作り。

やきやまファームの肉厚な椎茸。採れたてだから焼くだけでごちそう。

つくねいも汁。正確な品種名かは定かでないが「つくねいも」と呼ばれるイモが三木里にはあるらしい!粘り気は山芋と長芋の中間だとか。カツオと昆布から丁寧にとったお出汁にイモの甘みが溶け込んでいる。

えごまもち。餅米とふかしたサツマイモをつぶして、ヨモギを練り込み丸めたら、砂糖と合わせたエゴマをたっぷりとまぶす。イモ入りなので翌日も柔らかい。手間がかかるので地元の人は一度にたくさん作り冷凍庫にストックしておくそう。

箸置きも地元の人の手作りだ。

オール三木里産のお昼ごはん。忘れちゃいけない麦みそは、あまからつぶつぶで、こんにゃくだけじゃなく何につけても美味しい。

一日限りの海辺のテラス食堂。

「いやぁここで食べるメシは最高だ!」別荘のつもりで三木里に買った家が、今では本宅になってしまったという方。

今日初めて会った方々。いっしょに働き、いっしょに食べれば、自然と打ち解けていく。

この方がこんにゃくいも農家さん。まだ白米のおにぎりがあるというので、遠慮なくおかわりを。

味噌焼きおにぎり。これまたうまかった。どれを食べてもうまい。カラダが欲しているものを口にしたとき浮かぶ言葉は「うまい」だ。働いた体に土地の手料理は染みわたる。

 

——いっかど来た!いっかど集めた!

清掃活動は正直楽ではない。でも、一通り終えたスタッフや参加者の顔に表れていたのは、清々しい気持ち、楽しい気持ち、満たされた気持ち。今日という一つの思い出に手を引かれ、また足を運びたくなる日がきっと来るだろう。すでに全員、三木里の関係人口だ。

「いっかど」とは、三木里の方言で「たくさん」という意味。たくさんの人の手で一つひとつ拾い集められたゴミは、袋に入る分だけでも40袋になった。清掃活動は、がんばっただけの結果がみえるのがいいところ。ゴミの量が達成感。美しい風景がご褒美だ。

 

プロジェクトを担当した地域おこし協力隊の藤井友美さんは、三木里に来て三カ月が経った。

藤井さん:地方には、自分だからできる役回りが残っている気がします。都会にいた頃の妙な孤独感がなくなり、なんとなく誰かとつながっていて、誰かが気にかけてくれているのを感じながら、安心感に包まれて暮らせています。プロジェクトを実施することができるのも、そんな地元の皆さんの存在があるからです。

 

この冬には、流木アートをイルミネーションで飾ることができたら…そんなイメージも膨らんでいるそう。

みんなでできることを、焦らずゆっくりひとつずつ。

三木里のアーティスト集団が演出する次なるプロジェクトも、大いに楽しみである。